勤続年数と離職率の正しい読み方|「勤続年数が短い=ブラック」は本当か

※本記事は有価証券報告書データの読み方に関する一般的な解説です。各企業の最新データは企業分析NOTEでご確認ください。

「この企業、平均勤続年数が5年しかない。離職率が高いブラック企業では?」

こうした判断をしたことがある方は少なくないでしょう。しかし、勤続年数が短いことと離職率が高いことはイコールではありません。この記事では、勤続年数データを正しく読み解く方法を解説します。


有報に「離職率」は記載されていない

まず重要な前提として、有価証券報告書には離職率は記載されていません。記載されているのは「平均勤続年数」です。

多くのメディアが「平均勤続年数が短い=離職率が高い」と解釈していますが、これは必ずしも正しくありません。


勤続年数が短くなる5つの理由

① 企業の設立年が新しい

2010年に設立された企業は、2026年時点で最長でも勤続16年です。設立が新しい企業ほど、物理的に平均勤続年数は短くなります。

IT業界やWeb系企業で勤続年数が短い主な理由はこれです。メルカリ(2013年設立)やSHIFT(2005年設立)の勤続年数が短いのは、離職率が高いからではなく企業自体が若いからです。

② 中途採用を積極的に行っている

急成長中の企業は大量の中途採用を行います。入社1〜3年の社員が多いため、平均勤続年数は自動的に短くなります。

従業員数が前年比で10%以上増えている企業は、中途採用による勤続年数の短縮効果が大きいと考えてよいでしょう。

③ 業界全体の人材流動性が高い

IT業界やコンサル業界は、3〜5年で転職するのが一般的な文化です。これは待遇への不満ではなく、キャリアアップのための前向きな転職が多いことを意味します。

業界平均との比較が重要です。IT業界で勤続年数8年なら業界平均並み、製造業で8年なら短い、という判断になります。

④ M&A・組織再編の影響

企業合併や事業統合があると、新会社での勤続年数はリセットされます。実態としては長年働いている社員でも、データ上は勤続年数が短く表示されます。

⑤ 本当に離職率が高い

もちろん、労働環境や待遇に問題があり、社員がすぐに辞めてしまうケースもあります。ただしこれは上記の①〜④を排除した上で判断すべきです。


勤続年数の正しい読み方チェックリスト

チェック項目 確認方法
企業の設立年はいつか 設立年を確認。設立10年以内なら勤続年数は構造的に短い
従業員数は増加しているか 前年比で増加→中途採用が多い→勤続年数は短くて当然
業界平均と比べてどうか 同業界での相対比較が重要
M&Aや組織再編があったか 直近で社名変更や合併があれば勤続リセットの可能性
残業時間・有休取得率はどうか 勤続年数だけでなく他の指標も総合的に確認

勤続年数が「長い」企業のリスク

逆に、勤続年数が長いことが必ずしも良いとも限りません。

勤続年数が長い理由 ポジティブ/ネガティブ
待遇が良く辞める必要がない ポジティブ
年功序列で居心地がよい 中立(成長機会は少ない可能性)
転職市場で通用するスキルが身につかない ネガティブ
辞めたくても辞められない(地方で転職先がない等) ネガティブ

平均勤続年数が20年を超える企業は、安定している反面、組織の新陳代謝が遅い可能性があります。若手にとってポストが詰まりやすく、昇進スピードが遅い傾向も見られます。


離職率を推定する方法

有報に離職率は記載されていませんが、以下の方法で間接的に推定できます。

方法1:従業員数の推移を見る

有報を複数年分確認し、従業員数が毎年減少していれば、退職者が採用者を上回っている可能性があります。

方法2:平均年齢と平均勤続年数の関係

「平均年齢 − 平均勤続年数 = 入社時の平均年齢」で概算できます。

平均年齢 平均勤続年数 入社平均年齢 意味
40歳 18年 22歳 新卒中心。長く働いている
40歳 8年 32歳 中途採用が多い
35歳 3年 32歳 中途採用中心 or 離職率が高い
30歳 5年 25歳 若い企業。第二新卒の採用が活発

方法3:複数の指標で総合判断

co-note.jpでは勤続年数に加えて、残業時間、有休取得率、年収、業績を総合スコアで評価しています。勤続年数だけで判断するのではなく、5つの指標を総合的に見ることで、より正確な判断が可能です。

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まとめ

  • 有報の「離職率」は記載されていない。あるのは「平均勤続年数」
  • 勤続年数が短い=ブラックとは限らない(設立年、中途採用、業界特性の影響が大きい)
  • 勤続年数が長い=良い企業とも限らない(組織の硬直化の可能性)
  • 勤続年数は業界平均との相対比較が重要
  • 離職率を判断するには、残業・有休・年収などの複数指標を総合的に確認すべき

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