退職金・企業年金の仕組み|年収に含まれない「隠れた報酬」を理解する
※本記事は退職金・企業年金制度の一般的な解説です。制度の有無や内容は企業により異なります。
有価証券報告書の「平均年間給与」には退職金は含まれていません。しかし、退職金制度がある企業とない企業では、生涯で受け取る総報酬に数千万円の差が生まれます。
年収データだけで企業を比較すると、この「隠れた報酬」を見落としてしまいます。この記事では、退職金・企業年金の仕組みと企業比較での考え方を解説します。
退職金の相場
厚生労働省の調査によると、大学卒・勤続20年以上の定年退職者の退職金は以下の通りです。
| 企業規模 | 退職金の平均額 |
|---|---|
| 大企業(1,000人以上) | 約2,000〜2,500万円 |
| 中企業(300〜999人) | 約1,500〜1,800万円 |
| 小企業(100〜299人) | 約1,000〜1,200万円 |
つまり、退職金制度がある大企業に定年まで勤めた場合、年収には表れない2,000万円以上の報酬を受け取ることになります。
退職金制度の3つのタイプ
① 退職一時金制度
退職時に一括で支払われる最も伝統的な制度です。勤続年数と退職時の基本給をもとに計算されるケースが多いです。
退職金 = 退職時基本給 × 支給率(勤続年数に応じた係数)
勤続年数が長いほど支給率が上がるため、長期雇用へのインセンティブとして機能しています。
② 確定給付企業年金(DB)
企業が将来の給付額を約束する年金制度です。退職後に一時金または年金として受け取れます。企業が運用リスクを負うため、社員にとっては安心感がある一方、企業の経営負担は大きくなります。
大手メーカーや金融機関で多く採用されています。
③ 確定拠出年金(DC・企業型)
企業が毎月一定額を拠出し、社員自身が運用先を選ぶ制度です。いわゆる「企業型DC」「企業型401k」と呼ばれるものです。
運用成績によって受取額が変動するため、社員側にリスクがありますが、転職時にポータビリティ(持ち運び)ができるメリットがあります。
近年は②のDB型から③のDC型に移行する企業が増えています。
退職金制度の有無を確認する方法
有価証券報告書での確認
有報の「注記事項」の中に「退職給付に関する注記」があれば、退職金制度が存在します。退職給付債務の金額から制度の規模を推定できます。
決算短信・IR資料
退職給付費用は販管費の一部として計上されています。1人当たりの退職給付費用が大きい企業ほど、手厚い退職金制度を持っている可能性があります。
採用ページ・求人票
「福利厚生」欄に「退職金制度あり」「確定拠出年金」「企業年金」等の記載があるか確認してください。
退職金がない企業が増えている
スタートアップやWeb系企業を中心に、退職金制度を設けない企業が増えています。
| 退職金あり | 退職金なし |
|---|---|
| 大手メーカー、金融、インフラ | Web系スタートアップ、SES企業 |
| 長期雇用を前提とした制度設計 | その分を月給やストックオプションで還元 |
| 転職すると金額が大幅に減る | 転職しても損しない |
退職金がない企業の年収が低いとは限りません。退職金の積立分を月給に上乗せしている企業もあります。しかし、月給に上乗せされた分は所得税・社会保険の対象になるため、退職金として受け取る方が税制上有利であることも知っておくべきです。
企業比較での考え方
年収700万円で退職金ありの企業と、年収800万円で退職金なしの企業を比較する場合:
| A社(退職金あり) | B社(退職金なし) | |
|---|---|---|
| 年収 | 700万円 | 800万円 |
| 退職金(年間積立相当) | 約50〜80万円 | 0円 |
| 実質年間報酬 | 約750〜780万円 | 800万円 |
額面年収で100万円の差があっても、退職金を考慮すると差は20〜50万円に縮まります。さらに退職金は税制優遇があるため、手取りベースでは逆転する可能性もあります。
まとめ
- 有報の平均年収には退職金は含まれていない
- 退職金制度がある企業とない企業では、生涯報酬に数千万円の差が生じる
- 退職金制度は一時金型からDC型への移行が進んでいる
- 年収だけで企業を比較すると「隠れた報酬」を見落とす
- 退職金の有無は有報の注記事項や採用ページで確認できる