企業分析NOTE

女性活躍推進法・くるみん・えるぼし認定の実質的な意味|認定の中身と限界

企業の採用ページや就活サイトでよく見る「くるみん認定」「えるぼし認定」のロゴ。一見すると「働きやすさのお墨付き」のように見えますが、認定の中身を理解しないと、実態以上に高く評価してしまうリスクがあります。

本コラムでは、女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法に基づく各種認定の基準と、認定取得企業を選ぶときに併せて見るべき有価証券報告書のデータを解説します。


2つの法律と4つの認定

法律認定対象
次世代育成支援対策推進法くるみん子育てサポート企業
プラチナくるみんくるみんよりさらに高い水準(特例認定)
トライくるみんくるみん旧基準相当(2022年新設)
女性活躍推進法えるぼし(1〜3段階)女性活躍に取り組む企業
プラチナえるぼしえるぼし最高水準の特例認定

「くるみん」は子育て支援、「えるぼし」は女性活躍と、目的が異なります。両方を取得している企業もありますが、片方だけの企業もあります。


くるみん認定の主な基準

くるみん認定は、行動計画を策定し以下のような基準を満たすと取得できます(2022年基準改定後)。

  • 男性育休取得率10%以上または子の出生時育休等取得率20%以上
  • 女性育休取得率75%以上
  • 3歳から小学校就学前の子に対する育児支援措置
  • 所定外労働の削減のための措置
  • 年次有給休暇の取得促進措置

プラチナくるみんは男性育休取得率30%以上など、より高い水準が要求されます。2025年に基準が再改定され、男性育休の数値基準がさらに引き上げられました。


えるぼし認定の主な基準

えるぼし認定は5つの評価項目について、達成項目数で1〜3段階に区分されます。

評価項目基準(業種により細かい数値あり)
①採用女性の競争倍率が男性とほぼ同程度、女性採用比率が業界平均以上
②継続就業女性の平均勤続年数が男性の70%以上 等
③労働時間等月45時間未満の法定時間外労働など
④管理職比率女性管理職比率が業界平均以上
⑤多様なキャリアコース非正規→正社員転換、再雇用 等

5項目すべてを満たすと「えるぼし3段階目」、3〜4項目で「2段階目」、1〜2項目で「1段階目」となります。プラチナえるぼしはえるぼし3段階目をベースに、行動計画の達成・課長相当職以上の女性比率がさらに高い水準など追加基準があります。


認定の「実質的な意味」と限界

①基準は「業界平均以上」が中心

えるぼしの基準の多くは「業界平均以上」を求めるものです。これは「平均的に女性活躍が遅れている業界では、低い水準でも認定が取得できる」ことを意味します。建設業や運輸業の認定企業の女性管理職比率が、全産業平均より低いケースも珍しくありません。

②男性育休の「取得率」は分母の取り方で大きく変わる

「男性育休取得率」と一口に言っても、配偶者が出産した男性のうち何人が取得したか、その分母にどこまで含めるかで数字が大きく変わります。詳細は男性育休取得率の正しい読み方を参照してください。

③取得日数までは問われない

育休取得率には「1日でも取得すればカウント」という算定方式が一般的です。1〜2週間の取得と6ヶ月の取得では実態は大きく異なりますが、認定の数字上は同じ扱いになります。

④認定取得後の維持確認は限定的

認定取得後も基準を維持する義務はありますが、毎年の厳密な再審査があるわけではありません。取得時の数値が経年で悪化していても、認定マークは使用し続けられます。

⑤女性活躍と「全社員の働きやすさ」は別物

えるぼし認定は女性に絞った指標が中心のため、男性社員の働き方や全社員の残業時間・有給取得率は反映されないケースもあります。総合的な働きやすさを判断するには別の指標が必要です。


認定企業を見るときに併せて確認したいデータ

認定マークの有無だけでなく、有価証券報告書の数値で実態を補完することが重要です。

  • 女性管理職比率の絶対値:業界平均ではなく、全産業平均(約13%)と比較する
  • 男女の平均年収格差:賃金格差の開示で実質的な平等度を確認
  • 女性の平均勤続年数:男女差が小さいほど長期就業しやすい
  • 男性育休取得「日数」:取得率だけでなく日数の中央値・平均
  • 有給休暇取得率:全社員の働きやすさの基本指標

これらのデータの読み方は女性管理職比率の正しい読み方人的資本開示の読み方でも詳しく解説しています。


認定取得が増える業界・遅れる業界

業界による取得状況の差は大きく、以下の傾向があります。

  • 取得が進む業界:金融、IT・通信、医薬品、サービス業(ホワイトカラー中心)
  • 取得が遅れる業界:建設、運輸、製造業現場、外食・小売(現場勤務中心)

業界別の女性活躍指標は本サイトのランキングや業界ページからも比較できます:→ 女性活躍ランキング銀行業医薬品建設業


企業選びで認定を活用するコツ

  • プラチナ認定を優先:通常のくるみん・えるぼしより明らかに高水準
  • 業界内の希少性を見る:建設業のえるぼし3段階目は、金融業の3段階目より高い努力を示す
  • 取得時期を確認:5年以上前に取得して以降更新がない場合は要注意
  • 有報データと突き合わせ:認定の数字と有報の女性管理職比率・賃金格差を併せて読む

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まとめ

  • くるみん(次世代法)とえるぼし(女性活躍推進法)は目的が異なり、両方の取得状況を確認する価値がある
  • えるぼしの基準は「業界平均以上」が中心のため、業界によって難易度が大きく異なる
  • 男性育休「取得率」は分母の取り方や取得日数によって実態が見えにくい
  • プラチナ認定は通常認定より明らかに高水準で、選別の参考になる
  • 認定マークだけでなく、有報の女性管理職比率・賃金格差・勤続年数と併せて判断することが重要