IT・通信業界の年収・残業・業績を徹底解説SIer・SES・自社開発の違いを有報データで比較

※本記事のデータは各社の有価証券報告書(2025年3月期)およびe-Statの公開情報に基づいています。最新のデータは企業分析NOTEの各企業ページでご確認ください。

IT・通信業界は「年収が高い」「成長産業」というイメージがある一方で、メーカー系SIer・ユーザー系SIer・独立系SIer・SES・Web系自社開発・通信キャリアなど、企業の立ち位置によって年収や働き方に大きな差があります。

この記事では、上場企業約0社の有価証券報告書データに基づき、IT・通信業界の構造を解き明かしながら、年収・残業・業績を客観的に解説します。さらに、準委任や請負といった契約形態が待遇にどう影響するかまで踏み込んで分析します。

IT・通信業界の全体像

業界の定義と市場規模

東証の業種分類「情報・通信業」には、システム開発(SIer)、ソフトウェア、通信キャリア、インターネットサービス、放送など幅広い事業が含まれます。総務省の調査によると、SIerが属する「情報サービス業」の市場規模は約18兆円に達しており、DX推進やAI活用の需要拡大により、今後も成長が見込まれています。

業界全体の平均データ

指標IT・通信業界平均全業界平均
平均年収676万円669万円

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IT業界の企業分類と年収の違い

IT・通信業界は、企業の成り立ちやビジネスモデルによって大きく分類できます。それぞれ仕事内容・年収水準・働き方が異なるため、就職・転職ではまず「自分が目指すのはどの分類か」を明確にすることが重要です。

メーカー系SIer

富士通、NEC、日立製作所など、電機メーカーのシステム部門またはその子会社にあたる企業です。親会社のハードウェアと組み合わせたシステム提案ができる点が強みで、年収のばらつきが少なく平均年収は800万円前後と高い水準が揃っています。

企業名平均年収平均残業勤続年数
富士通株式会社929万円9.1h18.2年詳細
株式会社日立製作所961万円-18.7年詳細
日本電気株式会社963万円6.5h16.6年詳細
NECネッツエスアイ株式会社745万円-17.0年詳細

※有価証券報告書(2025年3月期)に基づく。富士通・日立はSIer事業以外の売上も含む連結ベースの数値

ユーザー系SIer

NTTデータ、野村総合研究所(NRI)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSKなど、通信・金融・商社のIT部門が独立した企業です。安定した受注基盤と手厚い福利厚生が特徴です。

企業名平均年収平均残業勤続年数
株式会社野村総合研究所1,235万円--詳細
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社1,029万円-13.4年詳細
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ923万円-14.1年詳細
SCSK株式会社788万円-17.0年詳細

独立系SIer

大塚商会、TIS、オービック、SHIFTなど、特定の親会社を持たない企業です。企業によって待遇のばらつきが大きく、営業利益率に注目して企業を選ぶことが重要です。

企業名平均年収平均残業勤続年数
株式会社オービック1,103万円-13.0年詳細
株式会社大塚商会1,028万円14.3h17.6年詳細
TIS株式会社807万円11.3h14.0年詳細
株式会社SHIFT685万円-3.2年詳細

Web系・自社開発企業

楽天グループ、メルカリ、サイバーエージェント、LINEヤフーなど、自社のWebサービスやアプリを企画・開発・運営する企業です。最新技術に触れやすく、プロダクトの企画段階から関与できる点が魅力です。

企業名平均年収平均残業勤続年数
ヤフー株式会社884万円-8.8年詳細
楽天株式会社851万円-6.3年詳細
株式会社サイバーエージェント914万円-6.5年詳細
株式会社メルカリ1,176万円-3.8年詳細

通信キャリア

NTT、KDDI、ソフトバンクなど、通信インフラを提供する企業です。社会インフラを担い事業の安定性が高く、年収水準も高い。近年は金融・コンテンツ・DX支援等への多角化を進めています。

企業名平均年収平均残業勤続年数
日本電信電話株式会社1,069万円-16.1年詳細
KDDI株式会社943万円24.1h17.4年詳細
ソフトバンク株式会社849万円22.4h14.5年詳細

【比較表】企業分類別の年収・働き方まとめ

分類年収の目安特徴
メーカー系SIer750〜950万円安定した待遇。大規模PJ中心
ユーザー系SIer780〜1,300万円親会社の安定基盤。上流工程中心
独立系SIer550〜900万円企業差が最も大きい。利益率が鍵
Web系・自社開発600〜800万円技術志向。成長中の企業が多い
SES400〜600万円参入しやすいが年収が上がりにくい
通信キャリア800〜950万円高安定・高年収。事業多角化が進行中

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SES企業の年収と実態

SES(System Engineering Service)とは、エンジニアを客先に常駐させて技術サービスを提供するビジネスモデルです。多重下請け構造の中で下流に行くほど単価が下がるため、SES企業は年収が低い傾向にあります。

SESから年収を上げるキャリアパス

SES → SIer(上流工程へ):要件定義・基本設計など上流工程に携わることで年収アップ。ユーザー系SIerに移れば年収200万円以上のアップも珍しくありません。
SES → Web系自社開発:プログラミングスキルを活かしてプロダクト開発側へ。モダンな技術スタックの実務経験があると選択肢が広がります。
SES → 社内SE:事業会社の情報システム部門で安定した環境のもとITの企画・運用に携わるルート。

契約形態による待遇の違い

IT業界で働く上で見落とされがちですが、契約形態の違いが年収や働き方に直接影響します。

準委任契約と請負契約の違い

項目準委任契約請負契約
報酬の対象作業の遂行(工数)成果物の完成・納品
完成義務なしあり
リスク低い(時間精算)高い(追加工数は自己負担)
多い現場SES・技術支援受託開発プロジェクト

自分の待遇を正しく理解するには、「客先との契約が何か」だけでなく「自分と会社の契約が何か」も把握し、額面年収だけでなく社会保険・福利厚生を含めた総合的な待遇で比較することが大切です。

IT・通信業界の業績トレンドと将来性

IT・通信業界はDX推進・AI需要の拡大を背景に堅調な成長を続けています。一方、経済産業省の推計では2030年にIT人材が最大約79万人不足するとされ、高度なスキルを持つエンジニアの年収上昇要因となっています。生成AIの普及により上流スキルの価値がさらに高まっています。

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転職・就職を考えている方へ

IT業界内でのキャリアアップでは「どのポジションの企業に移るか」が年収に大きく影響します。同じ分類内でも企業ごとの差は非常に大きいため、個別企業のデータを確認した上で判断することが重要です。

未経験の場合、SES企業や独立系SIerからスタートし2〜3年の実務経験を積みながらキャリアアップしていくのが一般的なルートです。「どの技術分野の経験が積めるか」を重視すると次のステップへの選択肢が広がります。

まとめ

IT・通信業界は全体として年収が高い成長産業ですが、企業の立ち位置によって待遇は大きく異なります。準委任・請負・派遣といった契約形態の違いも待遇に直接影響します。企業選びの際は「IT業界の平均年収」ではなく、企業の分類と個別データを確認した上で判断することをおすすめします。